相続不動産を上手に売却
相続に関する不動産のご相談で最も多いのが、相続した土地・建物を実際には使わないので、売却したいというものです。
不動産の売却というイベントは、人生で何度も経験することではないため、こちらの経験値が不動産会社に比べると圧倒的に少ないのが現実です。
より良い売却の方法、より良いタイミング、より良い税務上の特例の使い方など、専門家に相談して最低限の情報を把握した上で、実際の売却に進みましょう。
未分割のまま不動産を売却する場合
相続財産の分割が未確定のまま売却することは可能です。未分割の不動産を売却して得た金銭を相続人間で分割する換価分割といわれる方法ですが、相続した財産を譲渡していることから、譲渡所得税の申告が必要となります。
換価時に換価代金の取得割合を決めている場合には、譲渡時点では分割済みであることから、譲渡所得の計算は換価代金の取得割合に応じて、収入や取得費・売却費用を按分して計算することになります。
換価時に換価代金の取得割合が決まっていない場合は、譲渡所得申告期限(譲渡した年の翌年の3月15日)までに換価代金の分割が行われていれば、換価代金の取得割合に応じて譲渡所得の計算を行い、分割が行われていなければ、法定相続割合で譲渡所得の計算を行うこととなります。
相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋等を、平成28年4月1日から平成31年12月31日までに売却して、一定の要件にあてはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができます(被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例)
小規模宅地の特例を使う場合の注意点
小規模宅地の特例とは、被相続人や生計を共にする親族の事業用や居住用の宅地について、一定の要件を満たしたああいにその宅地の評価額を80%減額してもらえるという制度です。
小規模宅地の特例を使う場合には、相続税の申告期限(亡くなった日の10ヶ月後)まで、原則として宅地の取得者がその宅地を継続して利用していることが必要となります。したがって、売却してしまうと特例が使えないことになります。
この制度の適用を受けるにはその他にも様々な要件を満たす必要がありますので、必ず税理士等の専門家に確認してください。
相続税が取得費に加算される特例(相続財産を譲渡した場合の取得費の特例)
この特例は、相続した土地建物を一定期間に譲渡した場合には、納税した相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができるというものです。
この特例を受けるためには、相続税申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していることが必要です。
例えば、平成30年4月1日に相続が開始した(亡くなった)場合には、相続税の申告期限は平成31年2月1日となりますので、その3年後の平成34年2月1日までに譲渡しなければなりません。