相続登記をしないと過料?|10万円以下の過料と正当な理由
10万円以下の過料
正当な理由がないのに相続登記の申請を怠った場合、10万円以下の過料の対象になります(不動産登記法164条1項)。
……第七十六条の二第一項若しくは第二項又は第七十六条の三第四項の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。
(不動産登記法164条1項)
過料は刑罰ではありませんので、前科にはなりません。ただし、裁判所の裁判によって科されるものです。
過料が科されるまでの流れ
法務省は、次の3段階を示しています(相続登記の申請義務化に関するQ&A 3-Q2)。
- 登記官が催告します。 義務違反を把握した場合、登記をするよう催告書が送付されます
- 期限内に登記がなければ、登記官が裁判所へ通知します。 ただし、催告を受けた方から説明を受けて、登記官が「正当な理由」があると認めた場合、通知は行われません
- 裁判所が判断します。 通知を受けた裁判所が要件に該当するかを判断し、過料の裁判が行われます。金額は10万円以下の範囲で裁判所が決定します
いきなり過料が科されることはありません。 催告書が届いた段階で登記をするか、事情を説明すれば、裁判所への通知には至りません。
登記官はどうやって義務違反を知るのか
登記官が、相続人が不動産の取得を知った日を把握することは容易ではありません。そのため法務省は、次のいずれかを端緒として義務違反を職務上知ったときに限り、催告を行うとしています(同 3-Q3)。
- 相続人が、ある不動産について遺言の内容に基づく登記を申請したところ、その遺言書に別の不動産も同じ相続人に相続させる旨が書かれていたとき
- 相続人が、ある不動産について遺産分割の結果に基づく登記を申請したところ、その遺産分割協議書に別の不動産も同じ相続人が相続する旨が書かれていたとき
つまり、一部の不動産だけ登記して、他を放置している場合が主に想定されています。
「正当な理由」があると認められる場合
法務省は、義務の履行期間内に次の事情が認められる場合は、一般に「正当な理由」があると認められる、としています(同 3-Q5。令和5年9月12日付け法務省民二第927号通達 記第2)。
- 相続人が極めて多数に上り、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合
- 遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人等の間で争われているために、不動産の帰属主体が明らかにならない場合
- 義務を負う方自身に重病その他これに準ずる事情がある場合
- 義務を負う方が配偶者からの暴力の被害者等であり、生命・心身に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合
- 義務を負う方が経済的に困窮しているために、登記申請に要する費用を負担する能力がない場合
この5つに当てはまらない場合でも、個別の事情に応じて理由に正当性が認められれば、「正当な理由」があると認められます。
「正当な理由」に当たりそうでも、放置はおすすめしません
上の1・2に当たる場合、その事情が続く限りは過料の対象になりにくいと考えられます。ただし、事情がなくなれば、そこから義務の履行を求められます。
また、相続人が多いケースや争いがあるケースほど、時間の経過とともに手続は難しくなります。 相続人の中でさらに相続が発生し(数次相続)、関係者が増えていくためです。
期限までに登記まで進められない場合でも、相続人申告登記で義務を果たしておくという方法があります。
ご相談ください
「うちの事情は正当な理由に当たるだろうか」というご相談も、多くいただきます。ご事情をうかがったうえで、いま取れる方法をご説明します。
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